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Windows10サポート切れをきっかけにZorinOSを触ってみたら「もうこれでいい」と思えた話

なぜ今「ZorinOS」なのか?

Windows10のサポート切れをきっかけに、「そろそろLinuxも現実的なのでは?」という声がSNSでも目立つようになり、ZorinOSが話題になっている。

筆者はこれまでデスクトップLinuxとして elementaryOS、Manjaro Linux、Garuda Linux、EndeavourOS を実際に使ってきたが、ZorinOSやPop!_OSは「入れただけ」に近い存在だった。

しかし今回、「本気で日常利用できるか?」という視点でZorinOSを改めて検証してみた。

結論──正直に言うと、「Linuxだから我慢する」場面はほとんどなかった

ZorinOS

ちなみにZorinOSには複数エディションがあるが、今回筆者が導入したのはZorinOS Core Editionである。


1.ZorinOSを入れたら最初に設定すべきこと

まずはNvidiaユーザー向け。

今回はインストール時に NVIDIA ドライバを選択せず「ノーマル」で入れたため、
後から手動で nvidia-driver-550 を導入した以下はその手順である。
おそらくインストーラで NVIDIA(または third-party)を選択していれば、
最初から入っていた可能性は高い。

Nvidia Driverのインストール(Nvidia以外の場合は飛ばしてOK)

ちなみに筆者の環境(HP Z2 Mini + NVIDIA T1000)では、
以下を明示的に実行した。

sudo apt update
sudo apt install nvidia-driver-550
sudo reboot

Ubuntu系に慣れている人ならおなじみの流れだが、
ZorinOSでもこれは王道だった。

再起動後、必ず 動作確認 を行う。

nvidia-smi

ここで GPU 情報とドライババージョンが表示されれば成功だ。

筆者環境では以下を確認できた。

  • NVIDIA T1000 が正しく認識
  • Driver Version: 550 系
  • GPU 使用率・VRAM が取得可能

Vulkan / OpenGL の確認(補足)

以下も念の為ではあるが、確認しておくとよい。
※ Vulkan周りは環境によって挙動が異なるため、
llvmpipe が混在する場合は「icd.d の整理」が必要になることがある。

vulkaninfo | grep -E "GPU|llvmpipe"

筆者の場合、ここで以下、LLVMとT1000が交互に出ていた。

llvmpipe (LLVM ...)

そこで、以下コマンドで確認

ls /usr/share/vulkan/icd.d/

以下でフォルダを作成し、不要な2ファイルを移動した。

sudo mkdir -p /usr/share/vulkan/icd.d/disabled

sudo mv /usr/share/vulkan/icd.d/lvp_icd.i686.json /usr/share/vulkan/icd.d/disabled/

sudo mv /usr/share/vulkan/icd.d/lvp_icd.x86_64.json /usr/share/vulkan/icd.d/disabled/

これで再起動して、筆者環境のT1000が正常化された。


2.日本語入力:ibusを捨ててfcitx5にしたら一気に幸せになれた

一方で、日本語入力は最初は盛大につまずいた。

  • 日本語変換の挙動が不安定
  • 全角半角キーの挙動が一定しない
  • Capsキーを押しても日本語変換モードになる
  • Capsキーの大文字小文字が逆になってしまう

正直、「何を押しても意図しない動きをする」状態で、
細かく設定すれば直るのかもしれないが、
そこまで付き合う気力はなかった。

切り分けの結果、原因はデフォルトの ibus と判断。
そこで思い切って fcitx5 に切り替えたところ、一気に安定した。

Fcitx5の設定方法は以下である。

sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc
sudo apt remove ibus

これで入力そのものは安定したが、
次にハマったのが 自動起動 だった。

いわゆる以下の従来のおまじないが効いてない。

GTK_IM_MODULE=fcitx5
QT_IM_MODULE=fcitx5
XMODIFIERS=@im=fcitx5

そして毎回コマンドでfcitx5&はしたくない。
そこで試行錯誤の結果、わかったことは以下。

  • /etc/environment におまじないを書いても意味はなかった
  • .profile もおまじないは効果なし
  • autostart 用 .desktop ファイルで起動させるのが正解

自動起動の設定方法は以下である。

mkdir -p ~/.config/autostart
cp /usr/share/applications/org.fcitx.Fcitx5.desktop ~/.config/autostart/

GUI上では自動起動設定が見当たらなかったが、
上記対応で結果として、日本語入力は完全に安定した。
ZorinOSで日本語入力に詰まっている人は、
最初から ibus を捨てて fcitx5 に行くのが最短ルートだと思う。

ZorinOS使ってみたけど、日本語入力でなんかおかしいと、詰まっている人はこれを参考にして欲しい。


3.動画編集:DaVinci Resolveは普通に実用ライン

Linuxで動画編集、と聞くと
「結局使い物にならないのでは?」と思う人は多いはずだ。

結論から言うと、ZorinOSでもDaVinci Resolveは普通に使えた。

最新の20.3も利用可能である。

インストールについて

DaVinci Resolveは公式にLinux版が提供されているが、
ZorinOSはDebian/Ubuntu系であるため、変換しないとインストールができない。

ちなみに筆者の別記事でelementaryOSと全く同様の手順でインストールが可能だ。
基本的には以下の流れで問題ない。

  • Blackmagic Design公式サイトからLinux版をダウンロード
  • .run を deb 化してインストール
    (詳細手順は過去記事を参照してもらいたい)

elementaryOS時代と比べても、ZorinOSの方が素直に動いた印象がある。

注意点(これは変わらない)

これはZorinOS固有ではなく、Linux版DaVinciの仕様だが、

  • 動画:mov
  • 音声:wav

が基本前提となる。
mp4素材を多用する場合は、事前変換が必要。

「ガチの商用編集」をLinuxでやるか?と言われると変換の手間が面倒なので非常に悩ましいが、
趣味〜検証用途なら十分実用レベルと感じている。


4.ゲーム:Steamは拍子抜けするほど普通

次はSteam。

ここは正直、一番拍子抜けしたポイントだった。

Steamの導入

sudo apt install steam

以上。
本当にそれだけで、拍子抜けするほど普通に起動する。

ゲームの動作

  • Protonを有効化
  • Windows向けタイトルも普通に起動
    (※モンハンライズ、モンハンワールド、空の軌跡 the 1stが動いた)
  • キーボード・マウスの挙動も問題なし

ちなみにelementaryOSではWM(ウィンドウマネージャ)絡みでゲームの全画面・入力周りに癖が出ることがあったが、ZorinOSではそうした違和感はほぼ感じなかった。
ちなみに今回、elementaryOSからZorinOSに乗り換えたのはWM絡みで空の軌跡が全画面表示の都合でキー操作の反応が悪かったのがきっかけである。


5.DTM:FL Studio(Windows版)が動いたのは正直デカい

そして個人的に一番の収穫がこれ。

FL Studio(Windows版)が普通に動いた。

導入方法

  • Windowsのインストーラをそのまま実行でWineが動いてインストールが始まる。
  • デスクトップ上にアイコンが表示されるが❌マークのアイコンなので、右クリックで起動を許可
  • 普通に実行可能
  • AKAI MPK Mini mk3が認識された

細かい調整は多少必要だが、起動・音出し・操作まで確認できた。

ポイント

  • LinuxでもDTMが「ネタ」ではなくなる
  • Windows専用ソフト資産を捨てなくていい
  • ZorinOSは「遊びと実用の境界」が低い

久々に環境構築してみて、ワクワクして遊んでしまった。
これにより正直、「Linuxに移行したらDTMは諦めるもの」という認識を良い意味で裏切られた。


6.ここまで触って感じたこと

  • ZorinOSは「Linuxだから我慢する」場面が少ない
  • elementaryOSよりもWM由来のクセが出にくい
  • Steam・DaVinci Resolve・FL Studioが使えるという安心感

7.Blenderは最新ではなく一つ前のバージョンが良い

もうひとつ、これは筆者環境に依存するものだが、NvidiaのT1000が最新ではCUDAの対象外となっていたこともあり、まだ今はひとつ前のバージョンで使用することとした。

Blenderの公式から過去バージョンをダウンロードし、以下でインストールした。

tar xvf blender-4.5.5-linux-x64.tar.xz
sudo mkdir -p /opt/blender
sudo mv blender-4.5.5-linux-x64 /opt/blender/blender-4.5
sudo ln -s /opt/blender/blender-4.5/blender /usr/local/bin/blender45
sudo ln -s /opt/blender/blender-4.5/blender /usr/local/bin/blender

そして以下でスタートメニューに追加することができる。

cp /opt/blender/blender-4.5/blender.desktop ~/.local/share/applications

おわりに

さて、まとめると、ZorinOSは特にWindowsのアプリケーションのインストールが普通に行えるのが大きい。
これまで難易度が高かったWineなどの設定をしなくても良くなったので敷居が下がったと言える。

肝心な日本語入力が痛いが、それは上記で改善されるので試して欲しい。

Windows10のサポート切れをきっかけに「Linuxは現実的なのか?」と考えている人にとって、
ZorinOSはかなりちょうどいい着地点だと思えた。

今後もZorinOSでいろいろとアプリを使ってみての挙動や特別な設定方法があれば共有したい。
スマホと連携できるZorinConectや他のゲームアプリについても確認してみる予定だ。

本記事が何かの参考になれば幸いである。